#48 『イングロリアス・バスターズ』

『イングロリアス・バスターズ』 INGLORIOUS BASTERS
2009年/アメリカ
脚本・監督:クェンティン・タランティーノ
出演:メラニー・ロラン、クリストフ・ヴァルツ、ブラッド・ピット、イーライ・ロス、ダニエル・ブリュール、ティル・シュヴァイガー

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 タランティーノ最新作。ふたを開けてみましょうか。

 結論を先に。

 タランティーノは偏愛家。映画を愛し、フィルムを愛し、映画館を愛し、予告編を愛す。ただ、映画に気狂いであれば良質な映画を作れるかと言えば、残念ながらそうではない。タランティーノは血となり肉となった映画の記憶の断片を再生しようと苦闘し、その愛故にフィルムの持つ魔力を発露させることができる。

 だが、それは断片でしかない。

 90分間ずっしりと、シートに沈み我を忘れて浸るのが映画なら、彼の映画は一瞬のフィルムのキラメキを断片的につないだに過ぎない。しかし、昨今のメジャー映画においてここまでフィルムの魔力を信じ、発露できる監督はどれほどいるだろうか?
 彼は恐らくそのことを十分理解している。自らの強みと、再生できない映画の記憶を。そんないじらしさ※が、私にとってのタランティーノ映画の魅力であり、その意味において、『イングロリアス・バスターズ』は彼の到達点であり限界点でもあると、私は感じた。

※【タランティーノのいじらしさ】…恐らく、彼の映画をずっと見ている人々はここら辺をよくご存知。友達の映画マニアが撮った冗談だけど本気の映画、として見てるのでは?だから他人に勧めず、コソコソ見る。だから親近感がわいて、タラちゃんと呼ぶ。

 Once upon a time.. in French occupied by Nazi.
 出だしの字幕からして映画的記憶に溢れる※。

※【出だしの字幕】…セルジオ・レオーネの三部作をこよなく愛すタラの、ほんのご挨拶。三部作とは、
Once upon a time in the West 邦題『ウェスタン』(68)
Once upon a time... the Revolution 邦題『夕陽のギャングたち』(71)
Once upon a time in America 邦題『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』(84)
の三本。
以下、いちいち拾ってるときりがないので映画トリビアは以上。

 フランスの農家を舞台に、ナチSSと農家の主人の会話が始まる。

 塹壕を舞台に、バスターズと捕らわれたドイツ兵の会話が始まる。

 カフェのテーブルを舞台にナチ高官たちとユダヤ女性の会話が始まる。

 居酒屋を舞台にドイツ兵と潜入したバスターズの会話が始まる。
 
...

 つまり、これは戦争アクション映画ではないのだ。
 タランティーノが得意とする緊張感に張り詰めた会話シーンを楽しみ、女優を美しく撮るタランティーノの偏愛っぷりを楽しむ映画なのだ。以上の文句は例えば『キル・ビル』(03、04)にもあてはまるが、本作を到達点、と評したのは会話シーンの充実っぷりからきている。

 無駄がない。
 無駄はあることにはある。タラ映画なのだから当たり前だ。しかし、それは映画の緊張感を持続するための会話であって、前作『デス・プルーフ』(07)の水っぽいおしゃべりではないのだ。

 そして、タランティーノという偏愛家が舞台として選んだ映画館と、フィルム。
 嗚呼...なんて映画愛に満ちているのか。
 しかし偏愛。
 彼の限界故に、昇華しない映画的記憶...。

 いじらしい。

↓本作の音楽は殆ど既存の映画音楽から引用...ここにも映画の記憶がたっぷりと...。

イングロリアス・バスターズ オリジナル・サウンドトラック
ワーナーミュージック・ジャパン
2009-11-11
サントラ


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